編集記者の仕事を長く続けていると、「文字」に対して執着のようなものを感じることがある。いったい「文字」の何に魅せられるのかというと、その「意味」はもちろん、文字の見てくれとしての「顔」、音にしたときの「語感」など、日本語を操る者たちを惹きつける要素を「文字」は意外と多く持っている。そんな思い入れのある文字たちの中で、特に私が好きなのが「雅」(みやび)という文字である。あらためて辞書にあたったところ、「上品でみやびやかなこと。風流なこと。また、そのさま。」(大辞林第二版)とある。
考えてみると、インターネットにまつわるビジネスには「雅さで見る視点」、言わば「雅プロトコル」なるものは存在しない。生きるか死ぬかの瀬戸際で勝負するベンチャービジネスにおいては、「リスクを恐れぬ勇気」「効率化」「スピード」といった要素が重要だと考えられている。「雅」はその対極にあるネットビジネスとは縁遠い価値だと受け止めている人も多いだろう。
しかし私は、やっぱり「雅」にこだわる。これこそがネットビジネスにおいても必要な価値基準の1つだと信じているし、これからもそう信じたい。とりわけ、相手の顔を直接に見ることができず、声色を耳にすることも適わないネットビジネスにおいて、「雅(みやび)さ」を伴わないサービスやビジネスに出会うと、そこからは「お金!」「お金!」といった悲鳴にも似た叫び声だけしか聞こえてこない気がする。最近はそんな「マネー至上主義」のビジネスに対する疑問の声も上がっているが、私はそれを上手く中和するキーワードが「雅(みやび)さ」だと考えている。そう思っていたところ、とても心強い先達の言葉にめぐり合った。
第一次世界大戦当時に米海軍の従軍牧師だったフレーザー師が「従軍牧師に欠かせない資質」を問われて、頭文字が「G」で始まるいくつかのキーワードを挙げている。
Gumption(積極性)
Grit(気概)
Guts(根性)
ここまでは現在のビジネスならびにビジネスパーソンに求められる素養と重なる。しかし、フレーザー師がすごいのはここからである。これら3つのキーワードの一番最初に述べた「G」こそが、師が一番言いたかったことだと私は思っている。先に述べた「雅(みやび)さ」に通ずる部分も多いその言葉は、次の言葉である。
Grace(気品)
これは前述の3つの「G」と合わせて、俗に「4つのG」と言われる名言である。まさに言い得て妙ではないか。戦争であってもこうである。Grace、Gumption、Grit、Guts、この「4つのG」は、そのまま「ビジネスに欠かせない資質」として置き換えることができると思う。

