少し前に読んだ本だが、『処生術 ー 生きるチカラが深まる本』(藤原和博著)は面白かった。著者が日本とヨーロッパで生活した過程で「?」と思った多くの事柄について、体験に基づく考察が述べられている。とくに印象に残っているのが次の一節。
「日本の昔の家屋には必ず暗くて怖いような空間があって、そこに祖先の例や様々な魑魅魍魎の世界が入り込む余地を与えていたのです。いわば家族の暮らす家の中にあえてブラックホールを持ち込むことによって、クリエイティブな何かを生み出そうとしていたのだとも言えます。」(本書より)
藤原氏は、常に文化はアンダーグランドから生まれると言う。なるほど、暗くて混沌として、何がなんだか分からない複雑怪奇な状態は大事にしなければならない。がしかし、現代社会にとっては、そうした存在こそが「恐怖」なのだとも言える。マーケティングで分析できないこうした「曖昧」で「手に取れない」(パソコンで分析できない)要素がどんどん削ぎ落とされた結果、あらゆるものがセグメント化されてターゲットを明確にした形に収められているのである。東京の再開発はその典型だろう。

