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ゾルゲといえば一級の大物国際スパイだが、その日常や情報収集活動を描くにあたって、ほとんど緊張感を演出できていない。その代わりに、突然に大きなボリュームになる音楽にビックリさせられたが、これは緊張感を与えるどころか鬱陶しさを感じてしまう。全体的にほんわかしたドラマ風で、後述する『アドルフに告ぐ』(手塚治虫著)で印象的だったスパイ活動の「命がけ」さ加減が全然伝わってこない。最後にベルリンの壁が崩れる映像と共にIMAGINEが流れ、篠田監督の歴史観がこの場面に集約されている気がしたが、ゾルゲ事件を3時間とはいえ短い時間で描く作品において、その帰結に戦後の東西冷戦という大きな物語を持ち出すのも納得できない展開だった。一緒に見始めたGFは冒頭で見切って早速と昼寝をしていた……。ただ、永澤俊矢の演技は本作の中でギラギラとした独特な存在感を放っていた。
映画としては失敗作と言えるのかもしれないが、ゾルゲ事件は史実のスパイ事件として当時の日本を揺るがした大事件だ。手塚治虫の名作『アドルフに告ぐ』の中でもゾルゲ事件が大きく取り上げられているが(もちろんこちらはフィクションの要素も多い)、展開もスリリングで息つく暇もない。いまNHKで『火の鳥』のアニメが放映中だが、この『アドルフに告ぐ』は史実に沿ったフィクションなので、ストーリーの馴染みやすさは文句ない。手塚作品の中でも名作中の名作だろう。映画『スパイ・ゾルゲ』は観なくてもいいと思うけど、この『アドルフに告ぐ』は読まないと人生の損失だと思うよ、本当に……。
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