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青春時代小説『喜知次』乙川優三郎

喜知次
乙川 優三郎

おすすめ平均
読んで損はありません!
彼の代表作。
かけがえのない人
「陰謀作家」とお呼びしていいのかな。
読後感がいいですね。

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先日の『生きる』に続いて乙川優三郎の作品を読んだ。この『喜知次』も心に染みわたる良い小説だった。喜知次という男が主人公だと思っていたが、そうじゃないんですね……。

主人公の小太郎少年は藩の祐筆頭の嫡男。友人の郡奉行の次男・台助、さらに下役の倅・猪平とは身分の壁を越えて友情を育んできた。成長するにつれ困窮する藩の実情もうかがい知るようになり、3人はそれぞれ自分の将来について考えをめぐらせ始める。そこには身分という大きな存在が立ちはだかる。1人の人間の死をきっかけに、3人の人生は大きく翻弄される。

山本周五郎の「さぶ」(関連エントリーはこちら)の系譜に連なる作品と言われているみたいだけど、確かに「さぶ」で描かれていた「少年の目から見た大人たち」という視線には近い気がする。「さぶ」に涙した人なら、この「喜知次」はひとたまりもないだろう。後半の展開は藤沢周平の『蝉しぐれ』(こちらも名作ですね)の味わいに近い気もした。

幕藩体制のもと、「生まれ」こそが人生の大半を決めてしまう。どんなにあがいても、自分の力ではどうにもならないことも多い。「家」や「身分」といった制度があたりまえだった時代の青春は、ときにはこうも残酷なのだろうか。小太郎の成長を通じて人間とは何か、友とは何かについて考えさせられた。

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2005年03月21日 10:43に投稿されたエントリーのページです。

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