数あるNHK大河ドラマの中でも「もう一度みたい!」と強く思っていた作品が、この「翔ぶが如く」です。司馬遼太郎さんの同名小説をベースにしてはいるのですが、幕末の物語については、「竜馬がゆく」や「歳月」といった司馬さんの別作品のエッセンスも入っている気がします。その意味では司馬さんの幕末維新モノをテレビドラマ向けに集大成した作品が、この「翔ぶが如く」だと言えるかもしれません。
この「翔ぶが如く」では西郷隆盛を西田俊行が、大久保利通を鹿賀丈史が演じています。これがまた見事にハマっているのです。薩摩の下級武士だった西郷と大久保の青春時代に始まり、さまざまな苦難を乗り越えついに明治維新をなしとげる、そして各々の運命的な最期……、までの物語です。
若き西郷と大久保、友情と尊敬でつながれた2人の強い絆もよく描かれています。加山雄三演じる島津斉彬も、高橋英樹の島津久光も司馬さんの小説のイメージどおりの見事な演技です。島津斉彬に見出され、異例の抜擢でお側近くに置かれることになった若き西郷と、斉彬の死後、久光から重用されて頭角をあらわす大久保の存在は、常に助け合いながら、幕末の薩摩藩の舵取り役をつとめていきます。って、この作品に物語の説明は不要ですね(笑)。
このDVDのハイライトは「征韓論」です。
大久保ら政府首脳の外遊(海外視察)中に、留守番役の西郷が(なかば戦争を前提とした)韓国政府との交渉を決めてしまうのです。帰国した大久保は、いまの明治政府には外国との戦争をする余裕など無く、そんなことをしたら国が滅びるとしてこの韓国使節派遣に内心では反対します。ただ、大久保はすでに参議の職を辞していたので、西郷と正面きって論を張る立場にありません。ましてや友であり、互いにいちばんの理解者であると認める西郷と戦いたくもないのです。
ただ、明治政府には西郷に正面きって意見できる人材がなく、各方面から大久保に「参議に復帰すべし」という重圧がかかります。以前に一度、三条実美・岩倉具視ら政府首脳に裏切られたことのある大久保は、彼らのバックアップを信用する気にもなれず参議復帰を固辞し続けます。しかし、岩倉具視らの重ねての要望により、ついに参議に復帰して西郷と戦うことを決意するのです。このあたりの大久保の苦しい立場と胸のうちはこの「翔ぶが如く」でよく表現されています。
そしてついに「決戦」を迎えます。西郷としては、朝鮮への大使派遣の議はすでに廟議でも決定済み(大久保らの外遊中に議決されている)だとして、「正しい手続きで一度決まったことだ」として「何をいまさらひっくり返そうとするのか」と迫ります。大久保は「政府首脳の外遊中には国事の大事を決めない、という取り決めを留守政府と交わしており、そのもとで決められた大使派遣は無効」と斬り込みます。
西郷と大久保の表面的(政治的)決裂はこの瞬間に決定的になるのですが、この場面は実にスリリングで迫力があります。このシーンだけでもDVDを買う価値はあります!
そして物語は進み、西郷が西南戦争で倒れ、大久保が紀尾井坂で凶刃に倒れ、ドラマが終わります。幕末維新に興味があり、小説なども好きな人ならぜひ見てほしい作品です。
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