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本について アーカイブ

2003年03月24日

4行日記とは

4line.gif
ウェブサイトで更新している「4行日記」について何件か問い合わせを受けたので、ここらで一度説明しておこうと思う。

4行日記とは小林惠智氏が提唱している日記術で、その日に起こった出来事を「事実」「気づき」「教訓」「宣言」の4項目挙げて、それぞれを1行ずつにまとめて日記として残すものである。

ある出来事に対して自分がどのように向かい合い、今後はどのように取り組むのかを明確に整理(宣言)することで、4行日記をつけることがメンタルトレーニングとしても効果があると私は思っている。今回、自分自身を鍛えていく過程で4行日記がどんな効果を発揮するのか見てみたいと思い、実験的に(でも、とっても楽しみながら)ウェブ上に4行日記を掲載することにした。

日記をつけるに際しては、いくつかの簡単なルールがあるので、『一日5分奇跡を起こす4行日記―成功者になる!「未来日記」のつくり方』(小林惠智著)を読まれることをおすすめしたい。

これを読んでウェブ上で4行日記を始めたという方は、ぜひご一報を!
とにかくみんなで楽しくいきましょう!

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2003年03月30日

考える・・・

911.gif
『ノーム・チョムスキー』を改めて読んだ。映画化された『チョムスキー 9.11 Power and Terror』とあわせて刊行された書籍で、映画のほうも試写で見させていただいた。版元はリトルモア社。多くの情報が作為的に飛び交っているいまこそ、自分の頭で考えなければいけないな……。

【参考】チョムスキーは米国で著名な言語学者で、最近は反体制の論客として人気。

2003年04月01日

歴史小説のススメ

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本書、「島津奔る」は何度も繰り返し読んだ歴史小説である。主人公の島津義弘といえば、朝鮮出兵において数千人で30万人の敵を打ち負かした武勇伝で知られている。

この朝鮮の役もそうだが、晩年の島津義弘は、どうしてか負け戦に組するようになる。関が原でも西軍に属した。西軍が崩壊するなか、寡兵だった兵力の温存に努めていた島津軍わずか千人が、最後の最後で見せた乾坤一擲の的中突破によって、徳川家康に冷や汗をかかせた様は圧巻である。

戦術眼、度量、リーダーシップなど、本書で描かれている島津義弘は現代を生きる我々ビジネスパーソンから見ても十分に魅力的である。人を惹きつけるリーダー像とは何か、今を生きるビジネスパーソンにこそ読んでほしい一冊だ。

2003年05月23日

山本周五郎生誕100年に『さぶ』再読

さぶ
山本 周五郎

おすすめ平均
人の優しさに出会いたいなら・・・
初めての書評
人間の本当の弱さ、強さに、心が震えた
自分の在り方を考え直せる作品
是非読んでみて下さい

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by G-Tools

今年は山本周五郎の生誕100年だという。この『さぶ』という小説を、私は何度繰り返し読んだことか……。筋書きはとっくに頭に入っている。にもかかわらず、繰り返し手に取り、しかも毎回読了が近づくにつれ、この物語を読み終えることに恐れのような寂しいような不思議な感情に囚われる。

さすがにここでは中身は詳しく述べないが、本書には、人間が成長する過程で直面する様々な感情や情念が描き出されている。それは現代でも共通する友情や恋愛、挫折、陰謀、裏切り、義理人情……である。本書はいわゆる「時代小説」だが、人間の本性に強くフォーカスされているため、いわゆる「時代モノくささ」は感じられない。日ごろ「時代小説はどうも……」と敬遠しがちな人も、本書からは深い感動を得られるだろう。心を耕すことのできる一冊として推薦したい。

2003年05月28日

『処生術』藤原和博

shoseijutsu.jpg少し前に読んだ本だが、『処生術 ー 生きるチカラが深まる本』(藤原和博著)は面白かった。著者が日本とヨーロッパで生活した過程で「?」と思った多くの事柄について、体験に基づく考察が述べられている。とくに印象に残っているのが次の一節。

「日本の昔の家屋には必ず暗くて怖いような空間があって、そこに祖先の例や様々な魑魅魍魎の世界が入り込む余地を与えていたのです。いわば家族の暮らす家の中にあえてブラックホールを持ち込むことによって、クリエイティブな何かを生み出そうとしていたのだとも言えます。」(本書より)

藤原氏は、常に文化はアンダーグランドから生まれると言う。なるほど、暗くて混沌として、何がなんだか分からない複雑怪奇な状態は大事にしなければならない。がしかし、現代社会にとっては、そうした存在こそが「恐怖」なのだとも言える。マーケティングで分析できないこうした「曖昧」で「手に取れない」(パソコンで分析できない)要素がどんどん削ぎ落とされた結果、あらゆるものがセグメント化されてターゲットを明確にした形に収められているのである。東京の再開発はその典型だろう。

『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』神田昌典著・ほか2冊

60min.jpg
大人気のコンサルタントである神田昌典氏の著書(『凡人の?』は共著)を3冊。上の写真左から『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』『非常識な成功法則』『凡人の逆襲』(平 秀信氏との共著)。実際に成功をおさめた著者自身による「あなたにも成功のチャンスはあります!」「こうすれば成功できる!」という強いメッセージ性を備えた本であり、平易な文体で語られ内容もわかりやすい。著者の神田氏は外務省出身のMBAホルダーという肩書きを持つが、本人はそのことを全然鼻にかけていないようで、自らを「リストラされたこともある凡人」として、“そんな自分が成功するために実践した”マーケティングの手法を具体的かつ実践的に述べている。マーケティングとしてはダイレクトマーケティングの方法論を著者流にアレンジした内容が多い。「これなら俺(私)にもできる!」と感じる人は多いだろう。読んでいて面白いので、売れに売れているのもよくわかる。

以前、糸井重里氏が『個人的なユニクロ主義』の冒頭でビジネス書を2つのタイプに分類していたが、その分類を用いるまでもなく、上記の神田氏の書籍はビジネスパーソン向けの「ビジネス・エンターテインメント書」である。こうした本を読むと、「ああ、おもしろかった! 俺もやんなきゃな!」(『個人的なユニクロ主義』より) とついつい思ってしまう。いずれにせよ元気が出ることは間違いないので(そして書籍の内容を実践すればビジネス上の効果もあるだろう)、未体験の人は気になったタイトルから手に取ってみるといい。

2003年06月07日

夢と住むハワイ島

dream.jpg仕事を半リタイアし、ハワイで暮らしている加藤賢一氏による「ハワイ暮らし実践本」。本書の特徴は、単なる「憧れの○×生活」的な読み物で終わらずに、家の選び方からライフラインの確保、子供の学校など、1人の人間(家族)が海外で生活を始めるにあたってクリアーしなければならない様々な手続きのノウハウが満載なところだ。

夢と住むハワイ島』 加藤賢一・永江一石(著)

読めば「いいなぁ…。よし、いつかは俺も!」と思わされること請け合い。ちなみに私はハワイに行ったことないのですが……。

2003年06月16日

『1秒の世界 GLOBAL CHANGE in ONE SECOND』山本良一ほか

1sec.jpg1秒の世界 GLOBAL CHANGE in ONE SECOND
責任編集:山本良一
Think the Earth Project:編

この世の中「1秒間」に起こるさまざまな変化を60項目ピックアップしてまとめた本。ベストセラー『世界がもし100人の村だったら』と同様のアプローチだ。

よく「昨年度だけで熱帯雨林が×○ヘクタール減少し……」なんてデータを目にするが、1年間という「尺の長」さと、×○ヘクタールという「数字の大きさ」のせいか、どうも自分自身の小さな日常と上手く重ねることができず、十分に実感が伴わない気がしていた。ところがこの本は、「1秒間に」である。読み手は、つい「お、今もか?」と箸を片手に食事中の自分とも重ね合わせてしまうのだ。

たしかに、「1秒間に、世界に420万トンの雨が降っています。」などと言われると、梅雨空を見上げたくもなってくるし、「1秒間に、4トンの文書用紙が世界中で使われています」と来るなら、[Print]ボタンを押す指も躊躇してしまう。

本文デザインがキレイなので、データのビジュアル化という視点でも楽しめた。

2003年06月26日

「三谷幸喜のありふれた生活2-怒濤の厄年」

mitani.jpg「三谷幸喜のありふれた生活2 - 怒濤の厄年」三谷幸喜

売れっ子脚本家によるエッセイ集。売れっ子劇作家の日常が三谷ならではの実にピュアな視線で描かれている。ちょうどビジネス書や小説を読むのに少し疲れた折、何の気なしに手に取った1冊だが面白かったので時間を忘れて一気に読んでしまった。

「そうか! 日常ってコミュニケーションの繰り返しなんだ……」と、当たり前だけど見失いがちなことに気づかされた。相手の気持ちを考え、会話を楽しむ。事実ではなく、人(自分と相手)の気持ちのやりとりに重きを置く。人を見る視線ってこうやって養うものなんだなぁ。

来年のNHK大河ドラマ『新撰組!』も楽しみ。

2003年08月13日

書店探訪

sanseido.jpg仕事がひとヤマ越えたので、久しぶりに神田で書店をブラブラ散策。何軒かの書店を見て回ったのち、以前のエントリーでも触れた[三省堂自遊時間]に入る。

高級感のある文房具をはじめカバンやブックカバーなど、本が好きな人が好みそうな“小物”が多く楽しめる。[上島珈琲店]が併設されているからか、書店くささがなく、店内も広々として気持ちがいい。

本日気になった書籍をメモ。

『なるほど世界知図帳〈'03‐'04〉』昭文社編集部(昭文社刊)

『会議革命』齋藤 孝(PHP)

『シルクロードと中央アジアの国々〈2001‐2002年版〉』地球の歩き方編集室(ダイヤモンド・ビッグ)

『週末起業』藤井孝一(ちくま新書)

『ウケる技術』水野敬也ほか(オーエス出版社)

『小富豪のためのタックスヘイヴン入門』海外投資を楽しむ会(東洋経済新報社)

2003年08月21日

『人間はどこまで耐えられるのか』

survival.jpg『人間はどこまで耐えられるのか』
著者:フランセス アッシュクロフト(矢羽野 薫:訳)
発行:河出書房新社
価格:2,200円+税
装幀:Rodeo

人間にとって極限の環境における生理学的な反応を解説しつつ、我々人間が生き延びることのできる限界を探った1冊。エベレストの頂上に登ったとき、深海まで潜ったとき、厳寒の地に赴いたとき、我々の身体はどうなるのだろうか。

こうした事の多くは、科学が発達する現代までは深い謎に包まれていた。たとえばかつて、高い山々を越えて勢いよく進軍すると、常に多くの兵士が原因不明の症状で命を落としていた。高高度が身体に与える影響など知られていなかった当時は、神聖な山々に足を踏み入れたために神々の怒りに触れたのだと言って人々の山岳信仰を助長したという。この本が面白かったのは、生理学的な解説だけにとどまらず、そうした「未生理学時代」のエピソードも散りばめられていることだ。

最近、ヨーロッパでは熱中症で数千人が命を落としているというニュースを目にする機会が多いが、本書には「とのくらいの暑さに耐えられるのか」という章もある(第三章)。ここでも、熱中症が発生するメカニズムを科学的に解説したうえで、アフリカの人の背が高くて手足が長いのは「身体の表面積を大きくして熱を効率的に放出するため」という“なるほど納得”のトピックも紹介してくれる。(P.157)。さらには、昔の人(といっても20世紀前半だが)が熱中症をどう捉えていたかなどが述べられていて興味深い。以下に引用する。

20世紀の前半には、日射病(現在の熱中症)は太陽による卒中の一種と考えられていた。太陽光線には危険な科学線が含まれていて、それが頭蓋骨に浸透して脳に達し、“太陽の一撃”を食らわすというのだ。太陽光線が体内に侵入するのを遅らせるとして、日よけのヘルメットと背骨に貼るパッドが流行した。防止の上に薄くて軽い金属の板を貼る人もいた。

熱中症が太陽の直接的な影響ではなく、身体の体温調節ができなくなることが原因だとわかるには、1917年まで待たなければならない。熱中症については、[熱中症のホームページ]に予防策なども含めてていねいな解説がある。

2003年09月30日

しっとりブックカバー

bookcover.JPG読書の際、本を傷つけたくないのでブックカバーを使っている。現在は6月に買った革製のブックカバーを使っているのだが、徐々に手にも馴染んできていい味が出てきた(気がする)。移動中の電車や休憩中のカフェでバッグから本を取り出すたび、しっとりとしたぬくもりが手に嬉しい。ちなみに文庫本には他社の革カバーを使っているが、それと比べると潤いというか、しっとり感が断然異なる。購入から3か月、いい買い物だったなぁと改めて思う。革製品は永い友達、仲良くしていきたいものである。

シーカンパニーのブックカバーはこちら

2003年10月04日

『アレックス・ヘイリー プレイボーイ・インタビューズ』

playboy.jpg『アレックス・ヘイリー プレイボーイ・インタビューズ』

著者:アレックス・ヘイリー(マレー・フィッシャー:編)
発行:中央アート出版社
価格:2,500円+税
ブックデザイン:森 葉子

ピューリッツァー賞を受賞した『ルーツ』などの著作で知られるアレックス・ヘイリーが、プレイボーイ誌上で繰り広げた様々な分野の人々のインタビュー集。初回ゲストであるマイルス・デイヴィスをはじめ、マルコムXやカシアス・クレイ(後のモハメッド・アリ)、マーチー・ルーサー・キング、ジョージ・リンカーン・ロックウェル(当時のアメリカ・ネオ・ナチ党首)、サミー・デイヴィスJrらが登場し、黒人問題に焦点を絞った鋭いインタビューが行われている。

たとえば、初回のマイルス(1962年)に対するアレックスの第一声はこうだ。
「あなたが手にしたミュージシャンとしての成功とともに、観客に対する不機嫌さや態度の悪さも問題になっていますが、それについてコメントはありますか?」

また、ジョージ・リンカーン・ロックウェルとの対談(1966年)に至っては、アレックスがこう切り出している。
「司令官。インタビューを始める前に、お聞きしてもよろしいですか? なぜ肘のところにピストルを置いたり、私たちの間に武装した護衛を置いたりしているのですか?」

それに対する両者の返答とその後に続く緊張感溢れる言葉の応酬は本を読んで頂きたいが、どうだろう。人種問題の置かれた当時の厳しい状況が、これらのひと言だけからも伝わってくる。それぞれトーンや表現は異なるが、どのインタビューも知性と教養に溢れ、1960年代から90年代にかけての黒人社会に対する怒りや希望を紡ぎ出している。いずれ劣らぬ真剣真っ向勝負である。ちなみにアレックス・ヘイリーは、このインタビューがきっかけで有名な『マルコムX自伝』の仕事を任された。

2003年11月05日

徒然草第百五十段 (要暗記?)

以前に読んだ宮本輝『約束の冬』で印象に残った一節、徒然草の第百五十段とその現代語訳を引用する。

徒然草第百五十段(『約束の冬』より)
能をつかんとする人、「よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得てさし出でたらんこそ、いと心にくからめ」と常に言ふめれど、かく言う人、一芸も習ひ得ることなし。いまだ堅固かたほなるより、上手の中にまじりて、毀り(そしり)笑はるるにも恥ぢず、つれなく過ぎて嗜む人、天性その骨なれども、道になづまず、みだりにせずして年を送れば、堪能(かんのう)の嗜まざるよりは、終に(つひに)上手の位にいたり、徳たけ、人に許されて、双(ならび)なき名を得る事なり。 天下のものの上手といへども、始めは不堪(ふかん)の聞こえもあり、無下の瑕瑾(かきん)もありき。されども、その人、道の掟正しく、これを重くして放埒せざれば、世の博士にて、万人の師となる事、諸道かはるべからず

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2004年02月24日

『蒼天航路』30巻

souten30.jpg2月23日は『蒼天航路』30巻の発売日。すかさず購入し、一気に読んだ。といっても、週刊モーニングで毎週チェックしているのだが、こうして1冊にまとまると楽しさも大盛りになる。何てったって、いま一番たのしみにしている漫画だし。

三国志を扱った漫画は数あるが、『蒼天航路』は個性的な各キャラクターが抜群に魅力的なのである。この30巻では前半は「政」(まつりごと)の話題が中心で、何晏(かあん)の存在感が異彩を放つ。後の世の杜甫や李白へとつながる詩作の大家として名を馳せた人物だが、ここで描かれている何晏といえば、麻薬をやるは、曹操の娘に手をつけるは、それはもう実にデカダンな男である。そこがなんとも言えずいい。一方、後半の話題は一転して「武」。有名な合肥(がっぴ)の攻防戦における張遼の神懸り的な強さが痛快で気持ちいい。すでに老年に差し掛かっているとはいえ、張遼は関羽らと並び称される人気武将だし、自然と物語も盛り上がってくる。次の31巻で彼の武将としてのハイライトが描かれるはず。う~ん、この漫画の話をはじめると終わらなそうだ(笑)。

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2004年03月01日

NHK「週刊ブックレビュー」

最近、NHKの「週刊ブックレビュー」をよく見ている。

週刊ブックレビューは、衛星放送草創期にスタートして満10年を迎えました。この節目の年を期に、これまでよりフランクで好奇心溢れる会話を楽しみながら本の魅力を余すところなく伝える、新しい知的エンターテイメント番組に生まれ変わりました。本を読むことの喜びや楽しみを再発見してみませんか?
毎週3人のゲストが登場し、各人のおすすめ本を紹介するという構成。知らなかった本も多く、「お、こんな本もあったんだ……」「この本は面白そうじゃん!」と気付くことも多い。NHKらしく(?)番組の雰囲気は少しのんびりしているが、日曜の朝に眠りたりない目をこすりながらゆっくり朝食をとりつつ眺めるには、このくらいのテンションの低さがちょうどいい。なにより、日曜の朝から「本をよみたいな……」と感じさせてくれることが、僕にとってのこの番組の一番の効能なのである。

2004年03月17日

『トゥルー・ストーリーズ』ポール・オースター

truestories.jpg日本で出版するためにオースター自ら目次を編んだという本書『トゥルー・ストーリーズ』。その内容は、これまでにオースターが様々な場所で書いてきたエッセイをまとめたもので、翻訳の柴田さんの仕事もいつもながら素晴らしい。

まだ読み始めたばかりだが、今朝方に読んだ以下に引用した箇所はとても印象的だったのでメモ代わりに残しておく。若きオースターが本をむさぼり読むさまと、それによって彼の内面に与えた大きな影響について語ったくだりである。

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2004年03月25日

『新リア王』についていけなくなってきたあなたに……

日本経済新聞朝刊で連載中の『新リア王』は面白い。毎朝きちんと読みたいと思うのだけど、物語が重厚なので日課にするのはなかなかヘビーだ。そんなわけで、「いかん、いかん」と思いながらも読めない日が続いている。こんな人が意外と多いのでは?と僕は思っているのだけど。

そんな声を受けてか、このほど、物語が第3章に突入するのを期に日経新聞が、これまでの『新リア王』のあらすじや登場人物をまとめたウェブサイトを開設した。ポイントがよくまとまっていて非常にわかりやすい(家系図や登場人物を見ると、その数の多さに圧倒されるかもしれないが……)。情報は随時更新されていくとのことなので、これからも置いてけぼりをくらったらここで復習しよう。

2004年04月19日

『光の島』を読む

関内にあったマンガ喫茶で尾瀬あきら著『光の島』を読んだ。氏のマンガは有名な『夏子の酒』『奈津の蔵』と読んだが、溌剌とした主人公の清々しさの陰にある(誰もが多かれ少なかれきっと抱えている)苦悩が上手なバランスで描かれているので、爽やかだけれどもどこか哀しくなる。この『光の島』は沖縄の小さな島を舞台に、村唯一の学校を廃校にしないために東京から島の親戚に預けられた光(主人公)の成長を描く物語である。

廃村を阻止するために何が何でも学校を継続しなければならないという大人達のエゴに子供が利用されている格好だが、光を含めた島の子供達はそうした事情も知ったうえで、明るくすくすくと成長していく。とはいえ光も小学校一年生、東京の両親や友達が恋しくないといえば嘘になる……。かと言って自分が東京に帰ると島の人たちが困る……。そんな状況で揺れ動く光の心情がいつもの「尾瀬節」で描かれており泣かせてくれる。これを読むと、島に行きたくなる人とそうでない人に別れるのも興味深いおすすめの全8巻。

光の島 1 (1)
尾瀬 あきら , 森口 豁



おすすめ平均
白黒だけども沖縄の青い海の色が見えてくるマンガ
とにかく・・

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2004年05月21日

祝『蒼天航路 31巻』発売!

souten31.jpg蒼天航路 31 (31)
李 學仁 , 王 欣太


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今日は『蒼天航路 31巻』の発売日。30巻に引き続き、この31巻でも曹操軍と孫権軍の戦いが続く。曹操軍では30巻に続き張遼の大暴れが目立つが、孫権軍では甘寧の不気味な活躍が光る。でも、本巻の一番の主役は何と言っても楽進だろう。

他の三国志では全然目立たない楽進だが、蒼天航路の楽進は実直なキャラクターが実にいい味を出している。どんなに傷を負っても「進むぞ」とつぶやきひたすら前進を続ける。傷つき、病に倒れてもそれは変わらない。最期もシーンも感動的だった。

曹操は言うまでもなく、各将軍や文官にいたるまで、個性溢れる人材のきらびやかさは他の三国志とは一線を画している。早く32巻がでないかなぁ……。

Googleで調べたら蒼天考:蒼天航路考察サイトを発見! ウェブリングもある。

2004年05月23日

今月号の『Pen』の特集はタイポグラフィー

Pen0406.jpg雑誌『Pen』6月号の特集「やっぱり楽しい、文字デザイン」を楽しく読んだ。Penにしては新しい切り口の特集記事だが、こうしたうれしい裏切りは大歓迎だ。

【追伸】記事の内容ではありませんが、表紙に関しては、samansaさんが言われているように不謹慎だと感じました。偶然にしても不自然すぎますね。samansaさんによる続報はこちら【追伸終わり 2004/05/26】

きれいなフォントや見事にレイアウトされた文字を見ていると、作り手の気持ちが伝わってくる。本の装丁やアルバムジャケットにも、コンテンツが伝えたい雰囲気をタイポグラフィで上手に表現されているものが多い。写真やイラストといったストレートなイメージ表現もいいが、文字の力もあなどれないのである。

タイポグラフィといえば、僕、実はこう見えても(?)、以前に企画・プロデュースした仕事が日本タイポグラフィ協会の特別賞をもらったみたいなのです! 「みたいなのです!」というのは、僕自身が受賞したってことではなく、そのプロジェクトでデザインをお任せしていたデザイナーさんが、そのプロジェクトでの仕事を評価されて受賞したってことです。こちらは企画とプロデュース、つまりその方から見ると「クライアント」ってこと。それでもそのときは嬉しくて、タイポグラフィ年鑑を見ながらしばらくニヤニヤしていたっけ……。

それはさておきタイポグラフィー、その概念について武蔵野美術大学のタイポグラフィの講座での定義を引用してみる。

タイポグラフィとは、辞書を牽くと活版印刷術と翻訳されるケースがほとんどであるが、今日では広く手書きの文字から活字、写植、デジタル・フォントそれにコンピュータ上のスクリーン・フォントまで、広範囲にわたる文字表現を指している。

フォント集とか見ていると楽しいよね。僕もよくフリーフォントとか落としてきていろいろと試している。気に入ったフォントを企画書作成時などで「ここぞ!」の場面で使ったりもする(期待通りの反応をしてくれる人はほとんどいないけど……)。

「タイポグラフィ」って言葉は普段あまり耳にする機会がないと思うけど、タイポグラフィについてはこの本が詳しい。文字組みに関する小手先のノウハウではなく、美しい活字とは何なのか、そうした根本的なテーマについて第一人者が解説している。そうこうしているうちに、またフォント遊びをしてみたくなってきたぞ!

typographyno.jpgタイポグラフィの読み方
小泉 均

おすすめ平均
複雑なものも実は基本の繰り返し
タイポについて熱く語る

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2004年06月05日

新書だいすき

毎月、小説を最低で5冊は読むことにしているが、今タームは締め切り日よりも早めに読み終えたので、今週末は気になっていた新書を読みあさることに。小説も好きだが、新書も大好き。サイズも手ごろなので、移動中やちょっとした空き時間に「勉強」できるような気がする。なんとなく気になっていたことが、するすると頭に入ってくるしね。まったく門外漢だったことも、新書をきっかけに研究しはじめることもある。ということで、今日のお出かけ前、バッグに入れた新書は以下の2冊。ほかにも書店に寄って何冊かゲットする予定。あぁ、楽しみだ。

禅的生活
玄侑 宗久

おすすめ平均
ふさわしい老師に出会うよろこび
悟れないけど楽になる
体系だった記述

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ネーミングの極意―日本語の魅力は音がつくる
木通 隆行


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2004年07月04日

『週刊朝日』(7月9日号)の特集

syukanasahi0709.jpg『週刊朝日』の7月9日号を入手した。お目当ては、地下鉄の中吊り広告で気になっていた「入院日額1万円保険コンペ」なる特集記事である。

今年に入ってから祖父母を相次いで亡くした(ともに95歳、96歳と大往生でした……)が、病院に足を運ぶたびに「自分が入院することになったら……」という不安が頭をよぎっていた。テレビでも医療保険のCMはガンガン流れているし、加入の是非を検討るためにも、一度しっかり見てみる必要があるなと思っていたところにタイムリーな記事。

まだ未読なので何とも言えないが、一覧表なども掲載されていて総花的な比較・検討はできそうである。すでに記事を読まれた人がいらっしゃったら感想などをお聞かせください!

2004年08月09日

仕事と掃除を朝に!

4l_People.gif■事実 :6時半に起きて書き物のお仕事ができた。
◆気づき:窓から朝日が差し込んで気持ちいいことこの上ない。
●教訓 :仕事だけじゃなく、おまけに掃除もできちゃったよ。早起きはいい。
★宣言 :私は、早起きを習慣付けられる人間である。

今夜は2時くらいまで部屋で雑務を片付けて、明日も早起きして頑張るぞ。

そうそう、本やで『キッパリ!』って本を見つけた。ちょっとした事を変えるだけで自分が変わるという、悪く言えばありがちなテーマだけど、脱力感のあるマンガも楽しげで、気軽に読めて効果がありそう。さっそく帰り道に読み始めたけど、「うんうん」「なるほど」と意外と(失礼……)説得力もある。帰宅時に「玄関の靴を揃え」、シャワー時に「バスタブを掃除し」、晩酌後は「使った食器を洗った」。読んでいない人には「何のこっちゃ?!」だろうな、、、でも「読めば納得」だよ。

キッパリ!―たった5分間で自分を変える方法
上大岡 トメ

おすすめ平均
読みやすく,良質な本
テンコブポーズ!
すぐ実行にうつせる!

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2004年08月11日

『ダ・ヴィンチ・コード 』にワクワクさせられた

ダ・ヴィンチ・コード (上)
ダン・ブラウン , 越前 敏弥

おすすめ平均
時間のあるときにいっき読みをすすめます。
寝不足にご用心
The Da Vinci Code

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ダ・ヴィンチ・コード (下)
ダン・ブラウン , 越前 敏弥

発売日 2004/05/31
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ベストセラーとして話題の『ダ・ヴィンチ・コード』()は一気に読み終える力作。目が離せない展開はハリウッド映画のようだ。かのレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、西洋の宗教や美術の歴史にまつわる「うんちく」も数多く出てくるので雑学ファンにもたまらない。

以下、一気に感想を書きます。

続きが読みたくなるような仕掛けが各章にあるので、飽きずに読みつづけられる。これまで言葉しか聞いたことのなかった「聖杯伝説」も、これだけ丁寧にその謎を語られると思わず惹きこまれてしまう。西洋史はあまり詳しくないが、これから興味を持ってちょくちょく調べてみようかなとも思った。暗号や謎解きを通じて大きな問題解決に取り組むプロセスにも非常にワクワクさせられた。

ラストは少し残念な思いをしたが、今年を代表する1冊であることは間違いないと思う。本好きの人からは、仕事の打ち合わせの合間とかに「『ダ・ヴィンチ・コード』って読みました?」と聞かれたこともあるし、世間的にも盛り上がっているのだろう。

※同書のウェブサイトはこちら(未読の人は本を読んでからね!)

2004年08月14日

『小森課長の優雅な日々』は楽しい

小森課長の優雅な日々
室積 光



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うだつの上がらない勤め人が殺し屋の頭目をコミカルに演じる、まるで現代版『必殺仕事人』のような楽しい話。常識的なサラリーマンがひょんなことから人殺しに手を染め、そこから殺し屋稼業に邁進する。殺す相手は、どこにでもいそうな人物たち。いわゆる「大悪人」ではなく、小さな悪意を人にまき散らして相手を傷つけている小市民たちだ。大きな悪事を働かなくとも、そうした人がまき散らす悪意は積み重なれば人殺しにも等しいと、本人は正義を貫いていることを信じて疑わない。やがて小森の回りに熱狂的な信者が増え、殺し屋集団のカリスマになってゆく。登場人物がそのへんにいそうな人たちなので、不思議と話に違和感がなく、読んでいてストレス解消にもなるかも。仕事人の中村主水のような表の顔と裏の顔のギャップも笑える。

直木賞を取った『空中ブランコ』のノリが好きな人はきっと楽しめると思う。おすすめ。

2004年08月15日

笑えてスカっとする『空中ブランコ』はいい

空中ブランコ
奥田 英朗

おすすめ平均
安心して読める癒し作品
呆れて笑ってしんみりして爽快!
非現実を描くことで浮かび上がる真実

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とにかくはちゃめちゃな精神科医、伊良部の活躍に笑わされる直木賞受賞作。エンターテインメント性が高く、一気に読まされてスカっと笑える。

ビタミン注射大好きな伊良部と巨乳ロック娘の看護婦が、真剣に悩んでいる患者達に奇想天外な治療を施す。患者もはじめは伊良部の言動に戸惑うが、やがて段々と伊良部に惹き付けられてゆく。

とにかく予想もつかない手段で色んな角度から患者を揺さぶるものだから、患者たちはたいへんだ。そんな患者たちが戸惑い、怒り、驚き、そして徐々に癒されていく様も笑いを誘う。そして最後には患者が背負っていた「凝り」のようなものがほぐされていく。軽く読める作品だが、構成はしっかり練られており、雑な印象はまったくない。言葉選びも丁寧になされている。前作『インザプール』同様に装丁も抜群に素敵だ。読んで損のない作品。

2004年08月17日

ねっとりと濃い味わいの『長崎乱楽坂』

長崎乱楽坂
吉田 修一

おすすめ平均
こういう作品も書く人だったのが驚き
「三村の家」に流れるもの
皮をむくようにナマを書く人

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『東京湾景』が月9に取り上げられるなど、いま最もノリにノっている作家の1人が吉田修一だろう。本作はそんな彼の異色作に挙げられるのではないだろうか。

本作は長崎を舞台に、栄華を極めたやくざの一家が没落していく様を幼い兄弟の視点で見つめた物語である。幼い頃からやくざ稼業に抵抗感を抱いていた兄弟の目の前で、地元では怖いモノ知らずだった一家が近代化に乗り遅れて傾きはじめる。

やくざ稼業から抜けたいと感じていた幼い兄は、物心がついた時分から町を出ることを企てる。ふるさとの地を捨てたいとどんなに願った兄は家を捨てる直前までは行くのだが、すんでのところで憎むべき家と土地を捨てることができない。そんな人間の性のようなものも描かれている。

かつては一家に群がり威勢もよかった多くの男たちが皆いなくなり、最後は老人と女子供だけになってしまう。兄はそんな家に澱のように沈み引きこもる。一方、そんな兄を見て育った弟は、落ちぶれた我が家の姿と兄の様子を重ね合わせる。そして一家の象徴である兄は、弟にとって憎むべき存在になる……。

本作は、この著者これまでの著作にくらべ、格段に泥くさく人間くさい。読んでいると、男たちの汗のべたつきや吐く息のにおいまで伝わってくるようだ。こういうのも好き。

2004年08月30日

『蒼天航路 32巻』が出ていたよ

蒼天航路 32 (32)
李 學仁 , 王 欣太

おすすめ平均
演義を知らない人には難解かも知れないが

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夏休みを終えて日本に帰国したら、大好きな『蒼天航路』の32巻が売られていた。さっそく購入して部屋に帰るなり読み始める。

32巻では、入蜀した劉備軍がいよいよ漢中に進軍する魏と蜀が初めて本格的に戦う名場面だ。孔明と法正2人の軍師の策を得た劉備軍を迎え撃つのは、魏の幹部である夏侯淵。この漫画は1人1人の登場人物を時間をかけて丁寧に育て上げているのが魅力で、少年期から曹操とともに過ごしてきたこの夏侯淵も、常に冷静で果断な男としてしっかり個性を確立している。対する蜀も張飛や趙雲、黄忠や馬超といった新旧のスターが勢ぞろいで、彼らが次から次へと登場して活躍する様は実に華々しい。

定軍山の戦いは、ここから33巻のハイライトに続くのだ。未読の人(三国志に興味がある人はなおさら!)は早めに1巻から読んだほうがいいよ! そろそろ物語りは佳境に入っていくから。

31巻については、こちら
30巻については、こちら

2004年09月01日

『THE BIG ISSUE』を買ったよ

040901bigissue.jpg昼ごろ、新宿駅前の交差点で売られていた『THE BIG ISSUE』を購入。一度は通り過ぎたものの、何か気になって引き返して買った。販売員(販売員証明を首にかけている)の一生懸命さが気になったのかも知れない。

このTHE BIG ISSUEはホームレスの人たちに収入を得る機会を提供しようと彼らを販売員として雇っているのが特徴で、1991年にロンドンで創刊されたものが昨年に日本に上陸、今号が創刊1周年である。以前から注目してはいたけど、実際に買ったのは初めて。

特集はPET SHOP BOYSに関する記事だが、この本の一番象徴的なのは「YOUR VOICE」という読者コーナーで、ここにはホームレスの人たちから本を購入することで、彼らに対する認識が変わったといった読者の声が多数寄せられている。1人の販売員に焦点をあてた「今月の人」もドラマチックである。

購入時に販売員の方の対応がとてもキビキビとして気持ちよく、僕にも「さて、今日も頑張りますか!」と前向きな気分が感染した。これからも時々買ってみたいと思った。

2004年09月17日

『辰巳屋疑獄』(松井今朝子)

辰巳屋疑獄
松井 今朝子



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悪気がないのに大騒ぎになってビックリしたってことはよくあるよね。かつて江戸幕府を激震させた贈収賄事件「辰巳屋騒動」の遠因を図らずも作ってしまった奉公人、元助の思いもきっとそうだったに違いない。あの大事件が、実は大阪商人による些細なきっかけで起こったというのは意外な驚きだ。

贈収賄事件は今日でも政財界でたびたび起こっているが、僕にとってはそのイメージの原点は「○○屋、御主も悪よのぉ」「お代官様にはかないませぬ……」という江戸時代の風景だ。非情にどろどろしているイメージがあるが、本書で描かれる贈収賄事件には、そのような雰囲気は微塵も感じられない。

辰巳屋の奉公人である元助は、(本人の意思とは別に)結果として事件の中心で大いに暗躍した形になるが、その本心は危機に陥った主人を守りたいという一心で、そのためにけなげに方々へ働きかけを行ったにすぎない。その純粋さが武家に食い物にされ、歴史に残る大事件へとつながっていく。結果として幕府側からも死罪者を出した大事件だが、主人思いの元助の純粋な気持ちが遠因だったと思うと悲しくなる。

余談だが、元助のキャラクターが周五郎の『さぶ』に出てくる“さぶ”とどこか重なる気がした。

2004年12月22日

『家守綺譚』は最高!

家守綺譚
梨木 香歩