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本について:藤沢周平 アーカイブ

2003年05月27日

『静かな木』藤沢周平

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日曜?月曜にかけて、往復で約3時間電車に乗ったので、道中に読もうと買ったのがこの『静かな木』(藤沢周平著、新潮文庫)だ。藤沢は“山本周五郎の後継者”と言われただけあって、物語の中には「日本人の美しさ」が随所に見え隠れしており、たくみな心情描写にぐいぐい引き込まれる(これが藤沢や山本の小説の大きな魅力!)。本書『静かな木』は短編集で、藤沢晩年の作品。人生・人間のありようを達観したかのようなユーモアに溢れた物語が多い。2?3時間もあれば読み終わるボリュームなので、仕事の合間や移動時などに、くたびれた心を一服させるのにもってこいの1冊だと思う。

2005年10月30日

「長門守の陰謀」(藤沢周平)を読む

藤沢周平の短編集「長門守の陰謀」を読みました。1篇目の「夢ぞ見し」は、武士の世界を女性の目から見た物語で、こんな言葉が藤沢作品に適しているかわからないが、実にチャーミングな作品です。亭主が連れてきたままま長逗留する客人について、友人の婦人とあれやこれや話したり妄想(笑)したりする様もいまどきの主婦の暮らしのようで楽しい。続く「春の雪」も女性が主人公だ。あたりまえの方程式のようにいかない女性の気持ちが自然と出ていました。

表題作の「長門守の陰謀」は、荘内藩のお家騒動を題材とした作品で、歴史小説の王道といえるテーマを扱いながらも藤沢周平節は存分に発揮されています。主人公からは悲哀も伝わってくるが、1本の筋がとおった気持ちのいい作品だと思いました。

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「雲奔る 小説 雲井竜雄」(藤沢周平)を読んだ

先ほどのエントリーで紹介した「長門守の陰謀」に続き、藤沢周平作品をもう1冊読みました。幕末を舞台にした「雲奔る」です。

米沢藩士である雲井龍雄が主人公です。安井息軒の愛弟子で三計塾きっての俊才だった人物だそうですが、恥ずかしながら知りませんでした。なので少し調べてみました。

雲井龍雄(1844~1870) 米沢藩出身
幕末に活躍した憂国の士。中島惣右衛門の次男で幼名猪吉。のち小島才助の養子となり小島辰三郎を名乗る。雲井龍雄は彼の最も知られた変名。幼少から秀才として知られ、興譲館に通って、その書籍を読み尽くしたともいう。~中略~ 江戸勤務となり安井息軒の塾で頭角をあらわす。その後、藩命で京都にて工作活動に従事。長州・土佐の志士と深く交流していた。戊辰戦争に突入すると「討薩の檄」を作って薩摩藩の野望を批判した。~以下略~(「やまがたなんでもかんでも博物館」「やまがたこの人」より引用

米沢藩といえば上杉家ですね。謙信公以来武門を尊ぶ家です。京都守護職を勤めた松平容保の会津藩に近いこともあってか、幕末期は徳川幕府を補佐する佐幕派として活動していました。雲井龍雄も江戸や京都で高名な志士らと交わりますが、佐幕と倒幕をいったりきたりする薩摩藩のやり方に彼は強い嫌悪感を覚えます。そしてこの「薩摩憎し」は彼の生涯の思想になります。

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2005年11月06日

「又蔵の火」(藤沢周平)は重い……

藤沢周平の初期の作品集「又蔵の火」を読みました。

「あとがき」で藤沢さんがおっしゃっているように、この本に収められている作品はどれも暗い……。読後も何か重いものをべろりと身にまとっている感じが取れません。

全体としてみれば、どの作品にも否定しきれない暗さがあって、一種の基調となって底を流れている。話の主人公たちは、いずれも暗い宿命のようなものに背中を押されて行き、あるいは死ぬ。(「あとがき」より引用)

藤沢作品といえば、市井の人びとの間に流れる人情やその暮らしぶりの描き方の見事さも魅力で、切なさやもの哀しさはつきものですがどこかに必ず「救い」が潜んでいるような気がします。その点で、救いがないほどに陰鬱な本作は異色といえるかもしれません。

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2005年11月12日

「竹光始末」(藤沢周平)

最近は藤沢周平の作品ばかりを読んでいます。このままだと全集も買ってしまいそうな勢いです……。

さて、今回手にしたのは「竹光始末」という作品です。表題作以下、全6篇からなる短編集で、いずれの作品の主人公たちも世間ではぱっとしない地味な男たちです。世には認められておらず、本人もそのことを決して不満にも思っていない。それでも実は剣の達人であったりして、芯の強さを持っている……。

世の片隅で生きる男たちの物語です。でも決して悲壮感が漂っているわけではありません。みんな自分の大事なものを守ることに一生懸命ですし、人生の楽しみって豊かさだけではないんだということを体現しているような気がします。

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2005年11月18日

「一茶」(藤沢周平)の人間くささ

藤沢周平の「一茶」を読みました。小林一茶といえば「やせ蛙 負けるな一茶 これにあり」などの句が有名で、どこか愛嬌のある句を読む俳人というイメージがあります。でも調べてみると、つねに貧しさと向かい合わせの暮らししかできず、果ては弟をだまして遺産を巻き上げた悪党、ということも語られています。

この本を読むと、つらくなります……。

幼いころの継母から受けた虐待、それを見かねた父親に江戸に奉公に出されたものの長続きせず、職を転々と変えていく一茶の姿は、江戸時代のそれでなく現代とも重なってきます。

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2005年11月21日

「暁のひかり」(藤沢周平)を読む

次から次に読んでいる藤沢周平作品ですが、次品は「暁のひかり」です。これは短編集で、収録されている作品にはやや暗めの作品(先日読んだ暗い作品「一茶」ほどではないにせよ)が多い気がしました。

堅気になろうと思った壺振り師が、希望の光だった少女の死によって再びいかさまを用いて破滅する表題作ほか、貧しさゆえに身を売る武家の内儀を哀れんだ博打うちが亭主を誘って賭場に乗り込む「穴熊」も切なくてよかったです。

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2005年11月26日

「麦屋町昼下がり」(藤沢周平)を読む

この「麦屋町昼下がり」は4篇の読みきり短編を集めた藤沢周平の作品です。表題作「麦長町昼下がり」のほか、「三ノ丸広場下城どき」「山姥橋夜五ツ」「榎屋敷宵の春月」を収めています。

Amazonのレビューでもどなたかが述べられてますが、西部劇さながらの剣劇が繰り広げられる迫力ある作品が多いのが本書の特徴です。

表題作では、突然の事故によって藩内随一と謳われる剣士と戦わなければならない宿命を負った主人公の話です。戦うのか、戦わないのかは最後までわかりませんが、やや意外な展開で幕を下ろします。

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2005年12月05日

不倫地獄の「海鳴り」(上・下)藤沢周平

藤沢周平の「海鳴り」を読みました。文庫で上下2冊です。主人公の新兵衛と、人妻おこうとの恋物語で、いわゆる不倫ものです。ただし、そこいらの軽薄な不倫小説とは格がぜんぜん違います。

家庭がうまくいっていない男性が人妻との不倫に走る……。たとえその先にあるのが地獄だとわかっていても引き返せない……。人生が折り返し点を過ぎたと感じ始めた中年男性の悲哀と、修羅の道とわかっていながらも泥沼の不倫に堕ちていく様が、非常にリアルに描かれていて怖いくらいです。

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2005年12月10日

清河八郎を描く「回天の門」(藤沢周平)

幕末の志士、清河八郎を描いた藤沢周平の「回天の門」を読みました。

清河八郎は、新選組人気のわりを食ってか、とかく悪役として取り上げられることが多い人物です。後に新選組となる近藤勇らを含む江戸近隣の浪士を「将軍警護」の名目で今日に連れ出し、その途端に将軍警護の名目を捨てて浪士隊を尊皇攘夷の一隊として倒幕勢力に寝返らせた「策士」「煽動家」といったレッテルを貼られているのが清河です。

本作では、清河の幼い時代から最期までを人間味ゆたかに描かれています。この「回天の門」を読むと、これまでの清河八郎のイメージが覆されることでしょう。

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2005年12月12日

絵を題材にした掌編集「日暮れ竹河岸」(藤沢周平)

藤沢周平の「日暮れ竹河岸」は、19の掌編からなる著者晩年の作品です。なにげない日常の出来事を情緒ゆたかに綴られていて心地よく読むことができました。

江戸の十二カ月を鮮やかに切りとった十二の掌篇と広重の「名所江戸百景」を舞台とした七つの短篇。それぞれに作者秘愛の浮世絵から発想を得て、つむぎだされた短篇名品集である。市井のひとびとの、陰翳ゆたかな人生絵図を掌の小品に仕上げた極上品、全十九篇を収録。これが作者生前最後の作品集となった。(amazon.co.jpの紹介文より引用)

ちょっとした出会いや別れ、人生のほんのわずかなワンシーンが切り出されています。いずれの作品も非常に短いので、書き込んでいく数歩手前でさりげなく終わる「余韻」が読み手に残され、それが本作品集の味わいとなっています。

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2006年04月07日

「秘太刀 馬の骨」(藤沢周平)は極上推理小説だ

20060407_umanohone.jpg藤沢周平の「秘太刀 馬の骨」を読みました。「馬の骨」という秘伝の剣技をめぐる謎解きが物語の骨子です。

藤沢周平といえば「隠し剣」シリーズが有名です。人知れず継承された秘技を背負った主人公たちの強さと哀しさがにじみ出ていて大好きなシリーズです。この「秘太刀 馬の骨」もこうした「隠し剣」シリーズのような物語だと、読む前はイメージしていました。

ところが、その期待は大きく裏切られることになりました。もちろん「いい意味で」の裏切りです:-)

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2006年04月29日

痛快時代小説「よろずや平四郎活人剣」(藤沢周平)

よろずや平四郎活人剣〈上〉藤沢周平の「よろずや平四郎活人剣」を読みました。「活人剣」などというと、いさましい剣豪小説をイメージしてしまうけど、この小説の主人公はいたって庶民的です。そこが、この物語をぐっと魅力的なものにしています。

目付で千石取りの次男坊として生まれた平四郎は、妾腹の出ということもあり、実家を離れて裏長屋暮らしをしています。日々の暮らしにも事欠くありさまで、そんななかで思いついたのが「よろずもめごと仲裁」ビジネスです。

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2006年05月03日

「獄医立花登手控え(1)」(藤沢周平)

新装版 春秋の檻―獄医立花登手控え〈1〉藤沢周平の「獄医立花登手控え」の第1巻を読みました。

立花登は牢屋に詰める医者で、柔術の達人です。主人公が剣士ではないので、チャンバラものの時代小説とは少し雰囲気が違っています。

囚人の依頼を受けて不正を暴いたり人助けをしたりといったところは、先だってのエントリーで紹介した「よろずや平四郎活人剣」と多少趣が近いかもしれませんね。

とは言え立花登は、町医者である叔父の家に居候する身分です。叔母らは下男同様に扱われ、従姉妹からも軽く見られています。部屋住みだった登が医学を志し、すでに江戸で医者として自立していた叔父のもとを頼って上京したのですから、文句も言えないのです。

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2006年05月26日

「三屋清左衛門残日録」(藤沢周平)

年老いた寂しさと、隠居の身ゆえの身軽さと、気持ちの若さによる清々しさが感じられる物語です。「三屋清左衛門残日録」という名の通り三屋清左衛門なる人物の隠居後の物語です。

現役時代は藩主の用人にまで出世した三谷ゆえ、隠居後も藩政府のごたごたに巻き込まれてしまいます。

「隠居の身に面倒な」と思いつつも、どこか愉しみながら相談に乗り、ときには果敢に行動を起こす姿は清々しく感じられます。

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2006年10月10日

「天保悪党伝」(藤沢周平)を読む

天保悪党伝
藤沢周平の「天保悪党伝」を読みました。その題どおり、天保の世に生きる悪党たちを主人公にした6編の作品からなる連作集です。松林伯円の「天保六歌撰」という講談にインスパイアされての作品だそうで、この「天保悪党伝」でも河内山宗俊、片岡直次郎、金子市之丞、森田屋清蔵、暗闇の丑松、三千歳の6人がそれぞれ主人公になっています。

彼らは(この小説においては)「悪党伝」という題名からイメージするほど悪い人たちではなく(笑)、どこか弱々しくて頼りなさげであったりおっちょこちょいであったりして、実に憎めない連中です。

そのため悪党話というより、「いい話」になっていて、いつもの藤沢節が炸裂しています:-)
タイトルほどおどろおどろしくないので、藤沢周平さんのファンならぜひ読んでみてください。

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